ナノマシン(カプセル)
ナノマシンの技術を使った「副作用の少ない新しい抗がん剤」の開発が進んでいる。現在、臨床試験段階で、早ければ数年後に、実用化される可能性がある。
現在のがん治療の3本柱
- 抗がん剤(化学療法)
- 手術(外科手術)
- 放射線治療
一般的には手術は患者への負担が大きく、投薬治療の方が体に負担が少ない。
しかし、がん治療では事情が異なる。がん治療の場合、手術で切除すれば再発を予防する経過観察をする。
一方、抗がん剤治療の場合は、激しい副作用があり、手術並みに体への負担が大きく、投薬期間も1年以上と長期間に及ぶ場合がある。
また、抗がん剤治療は治療費が高く、年間100万円以上になる場合もある。
このように現在の抗がん剤治療は患者の体力的や経済的な負担が大きい。その負担を軽減するのが「ナノマシン」治療だ。
がん細胞の特徴
がん細胞は、増殖力が強く、正常細胞よりも大量の栄養や酸素を必要とする。そのため、がん細胞の周辺には新しい血管が多くできる。
「がん細胞の周辺の血管」には「普通の血管」より大きい穴が開いていて、そこから、がん細胞に大量の血液や多くのブドウ糖が運ばれる。
PET検査では、この性質を利用し、ブドウ糖を体内に注入し、ブドウ糖が集まったところを「がん細胞」と診断する。
副作用が少ない理由
「抗がん剤をカプセル化して大きさ」を「普通の血管の穴」より大きく、「がん細胞周辺の血管の穴」よりも小さくする。
そうすると、抗がん剤は、普通の血管の穴を通れないため、がん細胞に集中的に集まる。
つまり、抗がん剤は、正常な細胞には届かす、副作用が少なくなる。
抗がん剤の副作用とは?
- 脱毛
- 吐き気
- 白血球減少(免疫力低下)
副作用がすくないもう一つの理由
がん細胞周辺は酸性になっている。抗がん剤を「酸性になると溶けるカプセル」に入れる。
すると、「酸性になると溶けるカプセル」に入れられた「抗がん剤」は、がん細胞周辺に行ってはじめてカプセルから放出され、効果を発揮する。
したがって、健康な細胞には「抗がん剤」が行かないようになって、副作用が少なくなる。
いつ実用化されるのか?
臨床試験の最終段階にある抗がん剤もある。乳がん、胃がん、すい臓がん、肺がん、大腸がんで臨床試験が進んでいる。
数年で実用化されると考えられる。
研究者
東京大学大学院工学系研究科/医学系研究科 片岡一則教授
まとめ&補足
これは新しい「抗がん剤」ではなく、既存の「抗がん剤」をカプセル(ナノマシン)に入れて、がん細胞にピンポイントで届けるものだ。
既存の抗がん剤の効果を高め、副作用を抑制するものであって、すぐに、がんが完治するというものではない。
説明が難しいのだが、成分的には従来の「抗がん剤」であり新薬ではない。しかし、薬事法では成分が同じでも製造方法を変えただけで、「新薬」として臨床試験をする必要がある。
今回のカプセル化も、臨床試験的には「新薬」とされる。