株主優待券
9月末と3月末の航空会社の株主には優待券が送られる。自分で使ってもいいし、売却すると一枚4,000円程度になる。
しかし、株価が5円下落すると1,000株(ANA株なら約30万円)でも5,000円の損失になる。これでは株主優待券をもらっても赤字になる。
この株価下落リスクなく、手数料数百円で株主優待券だけをもらう方法がある。
それがクロス取引(両建て)という方法だ。
優待券をもらう条件
現物株を権利付最終売買日に保有していなければいけない。信用で買っているだけでは優待券はもらえない。
2017年3月の権利付最終売買日は2017年3月28日(火)なので、この日までに現物に保有していれば優待券を郵送でもらえる。
株式は翌日の2017年3月29日(水)に売却してもいい。
信用の「現渡取引」を2017年3月28日(火)の午後3時~午後3時30分にすると、証券会社によっては2017年3月28日(火)付の成約となり、株主優待券がもらえない。
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現物株のデメリット
権利付最終売買日に現物株を買って、翌日に売却する場合、株価が5円値下がりすると1,000株で5,000円の損失になる。
優待券の価値は4,000円程度なので株価5円の値下がりでトータルではマイナスとなる。
現物と信用の両建
価格変動リスクを回避するためには、「現物の買い」と「信用の売り」を同時にすればいい。
例えば、
「現物でANA株を株価300円で1,000株買い」と
「信用でANA株を株価300円で1,000株売り」をすればいい。
この状態で権利付最終売買日を迎える。
翌日に信用の売りを解消するため、「現渡し取引」をすると、「信用売り残」と「現物株」もなくなり、売却代金の現金約30万円が口座に残る。
同じ株価で現物買と信用売をする方法
午前9時~15時の取引時間中では1秒で株価が変動するので、現物買と信用売を同時に注文を出しても必ずしも同じ株価で成約しない。
したがって、午前9時の寄り付き前に「現物の成行買い」と「信用の成行売り」注文を出しておく。そうすると両方ともその日の始値で成約する。
逆日歩とは?
逆日歩とは株を借りるときの借り賃(品貸料)のこと。例えば、1株当たり5円の逆日歩がつくと、1,000株の「信用売り」で5,000円を支払わなければならない。
「一般信用売り」ならば、この逆日歩を支払う必要がない。
「制度信用」と「一般信用」
信用取引には「制度信用」と「一般信用」の二種類がある。
「制度信用」とは取引所規則によって決定される取引で「逆日歩」が発生する。
「一般信用」は証券会社と投資家の間で設定できる取引で「逆日歩」は発生しない。
一般信用売りできる証券会社 |
SBI証券 |
松井証券 |
カブドットコム証券 |
岩井コスモ証券 |
大和証券 |
手数料(コスト)はいくらかかるか?
ANAの株主優待券は1枚4,000円程度の価値なので、手数料で2,000円~3,000円かかれば、利益は少なくなる。そこで手数料(コスト)について調べてみた。
売買手数料 | 現物株、信用株の売買手数料 |
逆日歩 | 制度信用のみかかる、一般信用は不要 |
貸株料(金利) | 権利付最終売買日に両建てして、翌日に現渡しても2日分の金利がががる |
コストの計算例
SBI証券でANA株1,000株を権利付最終売買日に「一般信用売り」と「現物買い」の両建をして、翌日に現渡する場合
手数料 | アクティブプランで、税込515円 |
貸株料 | 30万円×2日/365日×3.9%=約64円 |
逆日歩 | 不要 |
計算では手数料(コスト)は579円で4,000円相当のANA株主優待券がもらえることになる。
しかし、SBI証券では現物と信用で手数料が別計算になるので、やり方を間違えると手数料が余計にかかる。
1 権利付最終売買日までにANA 1,000株を「信用買」、ANA 1,000株「信用売」注文を出す。
2 成約したら、「信用買」のみを「現引(手数料無料)」する。
3 「ANA 1,000株の現物株」と「ANA一般信用 1,000株の売り」の両建てとなる。
4 翌日に「ANA 1,000株の一般信用売り建て」を「現渡」して、売り建てを決済する。
信用の「現渡取引」を権利付最終売買日の午後3時~午後3時30分にすると、証券会社によっては権利付最終売買日の成約となり、株主優待券がもらえない。
4,000株までが資金効率がいい
保有株数によって株主優待券の枚数が違ってくる。
ANA株保有数 | 株主優待券枚数 |
1,000株 | 1枚 |
2,000株 | 2枚 |
3,000株 | 3枚 |
4,000株 | 4枚 |
5,000株 | 4枚 |
6,000株 | 5枚 |
7,000株 | 5枚 |
8,000株 | 6枚 |
9,000株 | 6枚 |
10,000株 | 7枚 |
4,000株までは1,000株につき1枚の優待券がもらえるので資金効率がいい。例えば、1人で8,000株保有する場合、優待券は6枚。2人が4,000株ずつ保有すると優待券は8枚となる。
ANA優待券4枚までの1枚当たりのコスト
ANA保有株数 | 株主優待券枚数 | 取引手数料 | 貸株料 | 合計 | 優待券1枚当たりのコスト |
1,000株 | 1枚 | 515円 | 64円 | 579円 | 579円 |
2,000株 | 2枚 | 1,254円 | 128円 | 1,382円 | 691円 |
3,000株 | 3枚 | 1,254円 | 192円 | 1,446円 | 482円 |
4,000株 | 4枚 | 1,686円 | 256円 | 1,942円 | 485円 |
注意点
権利付最終売買日には一般信用の株が不足することがある。その場合、一般信用で売り建てはできない。権利付最終売買日より前にに売り建てをすると「貸株料」が数百円だが高くなる。
権利付最終売買日に売り建てし、当日の取引終了後の午後3時~午後3時30分の間に、現渡すると、当日の約定になって優待券がもらえない。
やり方を間違うと逆日歩が発生したり損失が発生することがある。自己責任でお願いします。