出典 国土交通省
成田空港の機能強化策
- 現在のB滑走路2,500mを北側に1,000m延伸し滑走路長を3,500mとする
- 新C滑走路(第3滑走路)3,500mを、空港の南東に新設する
- 現在の第2ターミナルの南側に新ターミナル(第4ターミナル)を建設する
新C滑走路(第3滑走路)建設予定地
- 新C滑走路(第3滑走路)3,500mは「芝山町、多古町」に建設する予定。
- 空港の敷地面積は現在の1,198haから2,297haに拡大する。
出典 NAA
成田空港強化の効果
- 第3滑走路増設により、成田空港の発着枠は現在の34万回から50万回に増加する。
成田国際空港会社(NAA)は2023年12月6日、空港の機能強化計画の柱となる新たな3本目のC滑走路(3500m)の整備に着手した。2029年3月末までの完成を目指す。
現在、成田空港はA滑走路4,000mとB滑走路2,500mの2本の滑走路が設置されている。
2029年3月に「B滑走路の3,500m化(幅60m)」と「3本目のC滑走路3,500m(幅45m)」が完成する予定。
これらが完成すれば、成田空港の敷地面積は現在の1,198haから+1,099ha拡大し2,297haとなる。
これにより、3,500m滑走路2本と4,000m滑走路1本の合計3本を有する国内トップクラスの空港となる。
また、発着枠も年間34万回から年間50万回に増加し、羽田空港の年間44.7万回を上回る。
出典 NAA・新ターミナルはT2の右側(南側)
成田空港は1978年の開港以来44年が経過し、施設が老朽化している。
また、3つの旅客ターミナルに分散しており、乗り継ぎに不便となっている。
そのため、現在の3つの旅客ターミナルを「1つのワンターミナル」に集約する構想が浮上している。
2023年3月、新ターミナルの場所は「3本の滑走路のほぼ中心となる第2ターミナルの南側」と提示された。
2029年以降2段階で整備されると見られる。
名称 | 仮・ワンターミナル(第4ターミナル) |
場所 | 3本の滑走路のほぼ中心となる第2ターミナルの南側 |
整備計画 | 2029年3月以降2段階で整備 |
フェーズ1 | 第2ターミナル(T2)南側に新ターミナルを半分整備
(T2とT3を接続し一体運用) |
フェーズ2 | 第1ターミナル(T1)を閉鎖し跡地に残り半分を整備
(最終的に現在のT2とT3は閉鎖) |
特徴 | 国際線と国内線の乗り継ぎをしやすくすることにより、アジアのハブ空港として競争力を高める狙いがある。
羽田空港は直行便主体で、成田空港はハブ空港という棲み分けをすると思われる。 |
項目 | 2021年現在 | 2029年3月予定 |
A滑走路 | A滑走路(4,000m × 幅60m) | A滑走路(4,000m × 幅60m) |
B滑走路 | B滑走路(2,500m × 幅60m) | B滑走路(3,500m × 幅60m)延長 |
C滑走路 | 無し | C滑走路(3,500m × 幅45m)新設 |
敷地面積 | 1,198ha | 2,297ha |
発着回数 | 年間34万回 | 年間50万回 |
- 2019年11月17日 NAAが申請した「航空法の変更許可申請」によると、B,C滑走路事業の許可を受けた後、速やかに着工し2029年3月31日に完成させる予定。
出典 千葉県
C滑走路が完成すると3本の滑走路を時間帯や離陸・着陸別に使い分けて、飛行機が飛ばない時間(運用制限時間)を7時間とする。
滑走路 | 2029年まで(運用時間) | 2029年以降(運用時間) |
A滑走路 | 6時~0時(18時間) | 離陸5時~22時(17時間) |
着陸7時30分~0時30分(17時間) | ||
B滑走路 | 6時~23時(17時間) | 離陸7時30分~0時30分(17時間) |
C滑走路 | 6時~0時(18時間) | 着陸5時~22時(17時間) |
出典 国土交通省
羽田空港との比較
空港滑走路と発着回数 | 羽田空港(現状) | 成田空港(現状) | 成田空港(増設後) |
滑走路 | 3,360m×1 | 4,000m×1 | 4,000m×1 |
3,000m×1 | 2,500m×1 | 3,500m×1 | |
2,500m×1 | 3,500m×1 | ||
2,500m×1 | |||
発着回数(年) | 44.7万回 | 34万回(2020年) | 50万回 |
将来的には羽田空港44.7万回+成田空港50万回=94.7万回となる。
成田空港の運用時間拡大
- 成田空港の運用時間は2019年10月27日から「午前5時~午前0時30分(深夜)」となっている。(午前1時まではカーフュー弾力運用)
- 従来の「午前6時~午後11時」から2時間30分延長された。
3本目のC滑走路の必要性
成田空港には現在A滑走路4,000m、B滑走路2,500mの2本の滑走路がある。
しかし、朝夕のラッシュ時には、発着枠が不足し、上空での着陸待ち、地上での離陸待ちが発生している。
このため、ピーク時間帯に対応するため第3滑走路(C滑走路)の建設が計画されている。
- 羽田空港の5本目の滑走路は建設費9,000億円と予想される。
- 成田空港の第3滑走路とB滑走路延長の事業費は4,000億円とされる。
- 羽田+成田の合計の発着枠拡大という観点から成田空港に第3滑走路建設する方が費用対効果が高いとされる。
新C滑走路3,500mの運用方法
新C滑走路3,500mはB滑走路と東西方向の間隔が短いためセミオープンパラレルで運用される。
新C滑走路3,500mはB滑走路の南北方向の中心線から東に300mずらして建設される予定で、この「ずれ(スタガー)」によりB滑走路と独立してC滑走路を運用できる。
南からの進入時
南側から新C滑走路に着陸する飛行機がある場合、B滑走路からは、C滑走路の着陸機と独立して北側に離陸できる。
北からの進入時
北側からB滑走路に着陸する飛行機がある場合、新C滑走路はB滑走路の着陸機と独立して南側に離陸できる。
C滑走路3,500m増設の効果
現在、成田空港の発着回数の上限は2020年までに管制を高度化し年間4万回増加させ34万回にする予定。
さらに、C滑走路3,500mを増設することで年間16万回増加させることができる。
つまり、C滑走路新設により、成田空港の発着回数は年間50万回になる。また買収する土地の面積は「1案」の場合約127haと予想される。
現在、成田空港の敷地面積は貨物施設や給油施設などの付帯施設も含め1,198ha(1,400haという資料もある)だが、C滑走路建設により、2,297ha(付帯施設も含め)に拡大する見通し。
C滑走路の長さはなぜ3,500mなのか?
まず、欧米便(747-400)であれば離陸3,400m、着陸2,600mが必要となる。
現在、B滑走路は2,500mなので欧米便の大型機(747-400)は通常、B滑走路には着陸しない。
そのため、成田空港のC滑走路は、747-400が燃料と貨物を満載しても離陸できる距離3,400mに+100mの余裕を見て離陸3,500mとし、着陸も+100mの余裕を見て2,700mを想定して計画されている。
平行滑走路間隔の基準
滑走路配置 | 滑走路間隔と運用 |
クロースパラレル |
760m未満
同時発着は不可× 同時出発は不可× |
セミオープンパラレル |
760m~1,310m未満
同時到着は不可× 同時出発は可○ |
オープンパラレル |
1,310m以上
同時発着は可○ 同時出発は可○ |
出典 国土交通省
ICAO(国際民間航空機関)の規定ではオープンパラレルの間隔は1,525m以上とされる。
コメント
第三滑走路はB滑走路を北側に3,500mに延伸したうえで、南側に3,500mで建設する1案が採用されたその理由は
- 発着枠を年間16万回増加させ成田空港全体として50万回とすることができる
- 北側からの着陸の場合、B滑走路での着陸復行がやりやすい
B滑走路の3,500m化を優先し、第3滑走路の完成はその後となる見通し。
B滑走路延長とC滑走路の計画概要
第3滑走路の計画は3案が検討されていた。
1案 | B滑走路南側に3,500mの滑走路(芝山町、多古町)を建設する案で、B滑走路の延長線から東に300mずらして建設予定 |
2案 | B滑走路東側に平行してオープンパラレル2,700mの滑走路を建設 |
3案 | B滑走路東側に平行してクロースパラレル2,700mの滑走路を建設 |
このうち、「1案」の現在のB滑走路2,500mを北側ニ1,000m延伸し3,500mとしたうえで、新規に3本目のC滑走路(3,500m)を建設する案が採用された。