- 機材費(リース料)
- 整備費
- 燃料費
- 着陸料
- 人件費(乗務員と空港職員)
機材によって大きく違うが、ボーイング737-800について試算してみる。
1.機材費(リース料)
S社はボーイング737-800型機の一機種なのでその決算書から737-800の機材費を読み取ることができる。ちなみに737-800型機のカタログ価格は80億円。
S社の決算をみると航空機機材費(飛行機のリース料)は全体で年間118億円、29機保有なので1機当りは年間4.07億円となる。
1機当たり月間リース料は3,400万円となる。
1日当たり飛行機が4往復(羽田~福岡)すると、1日8フライト、月間約240回 となる。
したがって1フライト(片道)のリース料は14万円(3,400万円÷240回)となる。
2.整備費は112億円
同様にS社の決算書を見ると、整備費は全体で112億円となる。737-800型機が全体で29機なので、1機当りの整備費は年間3.86億円となる。
月間の1機当り整備費は約3,200万円となる。
1日当たり飛行機が4往復(羽田~福岡)すると、1日8フライト、月間約240回 となる。
したがって1フライト(片道)の整備費は13万円(3,400万円÷240回)となる。
3.飛行機の燃費
ジェット燃料には「ケロシン」を使用しており、「灯油」とほぼ同じ成分。
価格はシンガポール市場で決定するが、日本の国内線用航空機燃料には1キロリットル当たり26,000円(1L当たり26円)の航空機燃料税が課税されている。
ボーイング737-800型機の最大搭載燃料は26,020リットル、最大航続距離は5,665 kmだ。
つまり、1リットルで218m飛べる。逆算すると1km飛ぶのに必要な燃料は4.6リットルとなる。
羽田空港~福岡空港の飛行距離は1,000kmなので4,600リットル消費する。1リットル当たり80円(ケロシン価格+航空機燃料税)とすると燃料費は約37万円となる。
4.着陸料
着陸料は飛行機の重量1トン当り2,000円程度、737-800型機の重量は71トンなので着陸料は約14万円となる。
直接運航経費
上記を合計すると、1フライト当りのコストは
- リース料(航空機機材費)14万円
- 整備費13万円
- 燃料費37万円
- 着陸料14万円
合計78万円になる。
5.人件費と間接費
乗務員や空港スタッフの人件費、業務委託費を試算する。 これはS社の決算書で合計約80億円と公表されている。これは同社の燃料費240億円の1/3に相当する。
1フライト当りの人件費、業務委託費を、燃料費(55万円)の1/3として計算約18万円と推定する。
ちなみに、CA(客室乗務員)の数は50座席に対して1名が必要となる。737-800の場合177座席なのでCA(客室乗務員)は3名必要となる。パイロットは機長と副操縦士の合計2名必要となる。
繰り返しになりますが、上記18万円には乗務員以外の空港職員の人件費・業務委託費が含まれる。
飛行機の運航コスト試算の結果
項目 | 737-800の運航コスト(羽田~福岡 1フライト当たり) |
機材費(リース料) | 140,000円 |
整備費 | 130,000円 |
燃料費 | 370,000円 |
着陸料 | 140,000円 |
乗務員と空港職員の人件費 | 180,000円 |
合計 | 960,000円 |
直接運航費78万円に人件費18万円を合計すると1フライト当り(羽田~福岡を想定)の運航コストは96万円となる。
この 96万円を177座席で割ると1座席当りのコストは5,400円となる。
実際には平均搭乗率70%なので平均乗客数は平均124人となる。
しだがって平均搭乗率70%の場合の運航コストは、96万円÷124人≒7,700円となる。
この7,700円が、実際の直接コストに近い。
さらに会社を運営するには、本社オフィスの賃貸料、本社社員の人件費、CMなどの販売管理費がかかる。
それらを含めると羽田空港~福岡空港の損益分岐点は中堅エアラインで1万円程度、大手エアラインで1万2000円程度と推定される。