老後2000万円問題とは?
2019年、金融庁の金融審議会が公表した報告書(『高齢社会における資産形成・管理』)の中で、「公的年金だけでは老後の生活費が不足する」とし、夫婦2人の無職世帯では、年金収入だけでは毎月約5万円不足する。結果、20~30年の老後生活で 約2000万円の資金が必要と試算したのが発端です。
2000万円の根拠
- モデルケース:夫65歳・妻60歳の無職夫婦
- 毎月の支出:約26万円(年間312万円)
- 毎月の年金収入:約21万円(年間252万円)
- 毎月の赤字:約5万円 × 12ヶ月 × 30年 ≒ 2000万円
2025年の消費者物価の上昇率
2025年5月の消費者物価の上昇率は+前年比3.7%、6月は前年比+3.3%と3%を超えています。
2019年の老後2000万円問題では、消費者物価の上昇率を0%で試算しているので、2025年現在では消費者物価の上昇率3%として試算する必要があります。
例えば、消費者物価が毎年3%上昇すると現在300万円の生活費が30年後には約2.4倍の720万円となります。
もちろん、年金の受給額も物価スライド方式で増加しますが、政府は年金支給額を増やしたくないので、年金は+1.9%しか増加していません。
ざっくり言うと、消費者物価が毎年3%上昇するが、年金額は2%しか上昇しないと考えていいと思います。
30年間の生活費
- 毎年、物価上昇率3%で増加
- 期間:30年間
- 初年度生活費:312万円
- 10年後 約419万円
- 20年後 約563万円
- 30年後 約755万円
- 30年間の総生活費:約1億4,837万円
2025年版、老後2000万円問題
実は、年金が年間110万円以上(65歳以上)の場合は所得税、住民税、社会保険料がかかります。
計算例
項目 | 金額(年間) |
---|---|
所得税 | 約23,000円 |
住民税 | 約71,000円 |
介護保険料(夫婦) | 約150,000円 |
小計 | 約244,000円 |
年金収入 | 約2,520,000円 |
手取り年金額 | 約2,276,000円 |
年間生活費312万円 – 手取り年金額228万円=毎年の赤字額84万円
84万円×30年=2,520万円
これは消費者物価の上昇を考慮していません。
消費者物価+3%、年金+2%で試算
項目 | 値 |
---|---|
初年度の生活費 | 312万円 |
初年度の手取り年金 | 228万円 |
初年度の不足額 | 84万円(=312−228) |
生活費の上昇率 | 毎年3% |
年金の上昇率 | 毎年2% |
計算期間 | 30年間 |
累計不足額 | 3,343万円 |
消費者物価の上昇を考慮すると、不足額は3,343万円になります。
資産1800万円を30年間運用
3,343万円はかなり大きな金額なので、NISA枠(1,800万円)を利用して、年間5%で運用し、毎年の不足額を補填し、残りを複利で運用する試算をします。
資産1800万円を30年間、5%で運用し、毎年の赤字を補填する。消費者物価+3%、年金手取り額+2%。
項目 | 内容 |
---|---|
初年度生活費 | 312万円 |
初年度手取り年金 | 228万円 |
初年度の赤字 | 84万円(=312 − 228) |
生活費の上昇率 | 年3% |
年金の上昇率 | 年2% |
資産額 | 1,800万円 |
資産運用利率 | 年5%(複利) |
運用期間 | 30年間 |
年ごとの資産の動き
年数 | 年間赤字(万円) | 年末資産(万円) |
---|---|---|
1年目 | 84.0 | 1,863.0 |
2年目 | 86.5 | 1,915.1 |
3年目 | 89.1 | 1,966.7 |
4年目 | 91.8 | 2,017.8 |
5年目 | 94.6 | 2,068.4 |
6年目 | 97.4 | 2,118.5 |
7年目 | 100.3 | 2,168.0 |
8年目 | 103.3 | 2,216.9 |
9年目 | 106.4 | 2,265.3 |
10年目 | 109.6 | 2,313.1 |
15年目 | 126.1 | 2,484.0 |
20年目 | 145.2 | 2,437.9 |
25年目 | 166.9 | 1,996.3 |
29年目 | 216.7 | 379.4 |
30年目 | 224.7 | 0.0 |
30年目(95歳)で資産が0円になる。
株価暴落に備える
長期投資をしていると、2~3回は株価が半分になるような大きな暴落が起こることがあります。しかし、株価は4~5年ほどで回復するため、その間は生活費の赤字をカバーするための資金が必要です。そこで、生活費の赤字分5年分を2回分、つまり約1,000万円の生活防衛資金を用意しておくのが理想的だと思います。
そうすると、運用資産として1,800万円に加えて、生活防衛資金の1,000万円を確保して合計2,800万円あれば、精神的にも経済的にも安心して生活できるでしょう。
区切りのいい数字で3,000万円を目標にするといいと思います。
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